根寄生植物Phelipanche
aegyptiacaの吸器内部にも道管と篩管ができるのですが、私たちは篩管に相当する細胞の成り立ちが、通常の篩管の細胞とは大きく異なることを見出しました。宿主の篩管にGFPを流し、寄生したフェリパンキ吸器のどの細胞をGFPが輸送されて行くかトラッキングしたところ、GFPは特定の細胞列を通って行くのですが、それらの細胞は細胞核を保持していました。普通の篩管管状要素は物資輸送のために細胞核やリボソームを失くすはずなのですが、吸器ではそうではありませんでした。
宿主篩管でGFPを発現させ、GFPが吸器のどの細胞を輸送されるかを解析(左)。GFPは細胞内しか通らない。すると吸器内でGFPが通る細胞は細胞核を持つ細胞であることが明らかとなった(右、青色が細胞核、緑色がGFP)。
なぜ吸器のGFP通導細胞は核を持つのか?篩管要素の細胞核分解に関わる遺伝子PaNAC45、PaNEN1、PaNEN4はいずれも吸器で発現していました。いっぽう、NAC-NENとは別な経路で篩部分化を制御するPaOPS、PaBIN2、PaBES1の中で、PaBES1の発現が低下していることがわかりました。このOPS-BES1経路の働きが通常の維管束分化過程に比べて低いことが、細胞核残存と関りがあると考えています。