吸器内での通導細胞の分化

 吸器が宿主植物の維管束に到達すると、吸器内で伸長していた細胞の一部が道管と篩管に分化します。この分化過程を調べてみると、普通の双子葉植物の根や茎で道管篩管が分化するのと同様な遺伝子ネットワークが働いていることがわかってきました。吸器での細胞分化には興味深い点が二つあります。一つは、道管や篩管の基となる「維管束幹細胞」が吸器の中央部付近に一過的に出現している点。伸長する吸器柔細胞からリプログラミングされると思われます。二つ目は、道管に当たった探索糸細胞は道管に、篩管に当たったのは篩管になる点です。これらの背後には寄生植物独特の細胞分化制御機構があるのではないかと考えられます。

維管束幹細胞特異的に発現するネナシカズラ遺伝子CjWOX4は、伸長中(0時間から48時間)の吸器ではほとんど発現していないが、吸器内部に通導細胞が現れる直前(72-96時間)に一過的に発現を高める。吸器の中央部付近の特定の細胞で発現している。

吸器内での通導細胞分化に関わる遺伝子ネットワーク。