mRNAの植物間長距離移行

 ふつう生物の細胞は、ゲノムから遺伝子を転写して翻訳する、という一連の工程を一つの細胞の中で行っていると考えられてきました。植物はこの点でも少し違っていて、ゲノムから転写された遺伝子やそこから翻訳されたタンパク質を、隣接する細胞へ、或いはメートル単位で離れた遠くの器官へ、移行させることによって全身性の機能統御を行なっています。

 一個体の植物の根と葉のような離れた器官間でもmRNAやタンパク質の長距離移行が行われています。最近、寄生植物と宿主植物という異種の植物間でもmRNAが交換されて、お互いの細胞内で相手由来の遺伝子産物が作られていることがわかってきました。

 どんなmRNAが交換されるかに関して選択性はあるのでしょうか?どうやって動くのでしょうか?動いた後、発現すべき細胞にどのようにきちんとランディングするのでしょうか?私たちはネナシカズラと宿主植物を用いて、これらの未解決問題に取り組んでいます。