異種植物間での二次原形質連絡形成機構

 寄生植物と宿主植物は別々の生物としての個体です。寄生が成立する時には、隣り合って密着したネナシカズラの細胞と宿主植物の細胞の間をつなぐトンネルができます。細胞と細胞をつなぐトンネルは「原形質連絡」と呼ばれ、一個体の細胞間には普遍的に存在するものです。しかし、寄生のように二つの異種の細胞が接触した時に新たに原形質連絡が形成されるというのは、生物界全体でも珍しい現象です。寄生植物と宿主植物の間の原形質連絡は、細胞分裂と無関係に形成されるため「二次原形質連絡」と呼ばれています。では二次原形質連絡はどのようにしてできるのでしょうか?

 上の図はウイルスの移行タンパク質とGFPの融合タンパク質、MP17-GFPを過剰発現している宿主シロイヌナズナ(At)にネナシカズラ(Cc)を寄生させ、探索糸先端でMP17-GFPの分布を調べた時のものです。MP17は原形質連絡の入り口にたまる性質を持つので、緑のスポットのところに原形質連絡があるのがわかります。シロイヌナズナとシロイヌナズナの細胞間にある(写真の右側)は当たり前ですが、シロイヌナズナとネナシカズラ探索糸細胞の間にもあるのがわかります(黄色矢印)。

 ネナシカズラのほうで原形質連絡構成タンパク質であるPlasmodesmata Localizing Protein(PDLP)やPlasmodesmata Germin-Like Protein(PDGLP)をコードする遺伝子の発現を見てみると、寄生した時に特異的に、寄生部位で特異的に発現が上昇していることがわかりました。

 これは二次原形質連絡の形成が寄生のシグナルによって転写レベルで調節されることを示唆しています。この転写開始のキューとなるシグナルは何なのか、調節している転写因子は何なのか、現在探索中です。原形質連絡形成の転写制御はこれまでに全く分かっておらず、見つけることができれば植物の多細胞性の理解が大きく進みます。